真空浸炭焼入れとは
2024.04.23
豆知識
真空浸炭焼入れとは、鉄製品の表面に炭素を浸透させて硬化する熱処理の一種です。
製品を真空の状態で浸炭し、高温で加熱することにより炭素が鋼の表層に浸透します。その後、急冷して材料の表面に硬さと耐摩耗性を向上させます。
真空浸炭焼入れの工程
1. 準備
まず、処理する部品を洗浄して油分や汚れを取り除きます。これにより、浸炭ガスが均等に部品表面に作用することができます。
2. 真空状態の作成
部品を真空炉に入れ、内部の空気を抜いて真空状態を作り出します。この真空状態が、酸化を防ぎながら効果的に炭素を部品表面に浸透させるために重要です。
3. 加熱
真空の状態で部品を所定の温度まで加熱します。この温度は材料や所望の特性に応じて異なりますが、通常は900℃から1000℃の範囲です。
4. 炭素の浸透
加熱中に炭化ガス(例えば、プロパンやメタンなど)を炉内に導入します。このガスが分解し、発生した炭素が鋼の表面に浸透していきます。浸炭の時間は部品の用途や必要な硬さによって調整されます。
5. 急冷(焼入れ)
炭素の浸透が終わった後、部品を急速に冷却します。この急冷によって、部品表面にマルテンサイトという非常に硬い組織が形成され、内部は靭性を保ちつつ表面の硬度が増します。冷却方法には水、油、または空気が使用されることがあります。
6. 低温焼戻し
急冷によって生じる内部応力を除去し、材料の耐久性を向上させるために、低温焼戻しを行います。通常は150℃から200℃で数時間保持することが一般的です。
これらの工程を経ることで、部品の表面は硬く耐摩耗性に優れ、一方で内部は靭性を保持することができます。これにより、自動車のエンジン部品やギアなどの耐久性が必要な部品に広く利用されています。
真空浸炭焼入れの特徴
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1.酸化や腐食の防止:真空中で行うため、材料が酸化や腐食するリスクが低減されます。
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2.均一な硬化:真空状態で均一に熱が行き渡りやすく、製品全体の均一な硬化が期待できます。
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3.環境に優しい:使用するガスが限定されており、環境への影響が少ない方法です。