工程内検査とは?不良を後工程に流さないための品質管理
1. 工程内検査とは?
工程内検査とは、製品を製造している途中の工程内で実施する検査のことを指します。完成品になってから行う最終検査とは異なり、加工・組立・成形などの各工程、または工程の節目で品質を確認するのが特徴です。
製造業の現場では、「不良はできるだけ早く見つけることが重要」とよく言われます。工程内検査は、まさにこの考え方を具体的な仕組みとして落とし込んだ品質管理手法です。不良が発生した直後、あるいは発生しやすい工程で検査を行うことで、不良品が後工程へ流れてしまうことを防ぐ役割を担います。
工程内検査と最終検査の違い
工程内検査と混同されやすいものに「最終検査」があります。最終検査は、製品がすべて完成した後に行う検査で、出荷可否を判断するためのものです。一方、工程内検査は不良を作らない・広げないための検査という位置づけになります。
たとえば、最終検査だけに頼っている場合、不良が見つかるのはすでに製品が完成した後です。この時点で不良が判明すると、手直しや廃棄が必要になり、多くの工数やコストが無駄になってしまいます。さらに、不良の原因がどの工程にあったのか特定しづらく、再発防止が難しくなるという問題もあります。
工程内検査を行っていれば、不良が発生した工程を早期に特定でき、その場で是正・改善につなげることが可能です。この点が、最終検査との大きな違いです。
工程内検査で何を検査するのか
工程内検査では、製品の外観や寸法、機能、加工状態など、次の工程に進めても問題ないかどうかを確認します。検査内容は製品や工程によって異なりますが、すべてを細かく検査する必要はありません。
重要なのは、「不良が発生しやすいポイント」「後戻りが難しいポイント」を見極め、効果的な検査ポイントを設定することです。たとえば、加工条件の影響を受けやすい工程や、組み付け後に分解が困難な工程などは、工程内検査の対象として優先度が高くなります。
全数検査と抜取検査
工程内検査には、「全数検査」と「抜取検査」という考え方があります。全数検査は、製造したすべての製品を検査する方法で、不良流出を確実に防げる反面、検査工数が増えるという課題があります。一方、抜取検査は一定数をサンプリングして検査する方法で、工数を抑えつつ傾向を把握できるのが特徴です。
どちらが正解というわけではなく、工程の重要度や不良のリスクに応じて使い分けることが重要です。
工程内検査の本質
工程内検査は、単なる「チェック作業」ではありません。本質的な目的は、不良を見つけることではなく、不良を作らない工程を維持・改善することにあります。そのため、検査結果を記録し、原因分析や工程改善に活かすことが欠かせません。
「工程内検査とは何か」を正しく理解することは、品質向上だけでなく、コスト削減や現場の負担軽減にもつながります。次の章では、なぜ工程内検査が必要なのかを、具体的な現場課題とあわせて詳しく解説していきます。
2. なぜ工程内検査が必要なのか

工程内検査が重要だと言われる理由は、「不良を後工程に流さないため」です。しかし、現場では「最終検査で見つければ十分ではないか」「検査を増やすと生産性が下がるのではないか」といった疑問や抵抗感を持たれることも少なくありません。なぜ、わざわざ工程の途中で検査を行う必要があるのでしょうか。
不良を後工程に流すことで起こる問題
不良が後工程に流れてしまうと、最も大きな問題となるのが手戻り工数の増加です。たとえば、加工工程で発生した不良に気づかないまま組立工程まで進んだ場合、不良が判明した時点で製品を分解し、再加工や再組立を行う必要があります。これは本来不要だった作業であり、現場の負担を大きく増やします。
さらに、後工程に進むほど製品の付加価値は高くなっています。そのため、同じ不良でも早い段階で見つける場合と、最終工程で見つかる場合とでは、損失額が大きく異なるのです。場合によっては修正が不可能となり、廃棄せざるを得ないケースもあります。
品質トラブルが拡大しやすくなる
工程内検査がない、または機能していない現場では、不良が連続して発生しても気づくのが遅れがちです。設備条件のズレや治具の摩耗、作業手順の誤りなどが原因で不良が発生していても、検査がなければ同じ不良品を大量に作り続けてしまうリスクがあります。
最終検査でまとめて不良が見つかった場合、「いつから不良が出ていたのか」「どの工程が原因なのか」を特定するのは簡単ではありません。その結果、原因究明に時間がかかり、出荷遅延や顧客への影響が拡大する可能性があります。
現場の負担とモチベーション低下
不良が後工程で見つかると、その修正作業を担うのは多くの場合、現場の作業者です。「自分の工程では問題なかったのに、なぜ手直しをしなければならないのか」という不満が生まれ、現場の雰囲気が悪化することもあります。
また、不良対応に追われることで本来の生産計画が崩れ、残業や突発対応が増えると、作業者のモチベーション低下にもつながります。工程内検査は、こうした現場のストレスを減らすための仕組みでもあるのです。
工程内検査は「品質を守る保険」
工程内検査は、不良を見つけるための作業ではありますが、本質的には品質トラブルを未然に防ぐための保険のような役割を果たします。問題が小さいうちに気づき、早期に是正することで、大きな損失を防ぐことができます。
「検査は付加価値を生まない」と言われることもありますが、不良による手戻りやクレーム対応と比べれば、工程内検査にかかる工数は決して無駄ではありません。むしろ、長期的に見れば品質と生産性を両立させるために欠かせない投資と言えるでしょう。
なぜ今、工程内検査が求められているのか
近年は、多品種少量生産や短納期化が進み、製造現場の条件変化が激しくなっています。その分、不良のリスクも高まりやすく、従来の最終検査だけでは対応しきれないケースが増えています。
工程内検査を適切に取り入れることで、変化に強い生産体制を構築し、不良を「後で直す」のではなく「その場で止める」品質管理が可能になります。次の章では、工程内検査のメリットを具体的に整理し、導入効果をより明確にしていきます。
3. 工程内検査のメリット

工程内検査を導入・強化することで得られるメリットは、「不良を減らす」ことだけではありません。品質の安定、コスト削減、現場の働きやすさ向上など、製造現場全体に幅広い効果をもたらします。ここでは、工程内検査の主なメリットを具体的に解説します。
不良流出を防ぎ、品質を安定させる
工程内検査の最大のメリットは、不良を後工程に流さないことです。不良が発生した直後に検知できれば、その工程で問題を止め、是正することができます。これにより、不良品が連鎖的に発生することを防ぎ、品質のばらつきを抑えることが可能になります。
最終検査だけに頼った品質管理では、「完成品として問題ないか」という結果しか分かりません。一方、工程内検査では「どの工程で、どのような異常が起きているのか」を把握できるため、品質を安定させるための管理がしやすくなるという利点があります。
手戻り・廃棄の削減によるコスト低減
不良が後工程で見つかるほど、修正にかかるコストは増大します。工程内検査によって不良を早期に発見できれば、簡単な調整や再加工で対応できるケースも多く、手戻りや廃棄を最小限に抑えることができます。
これは直接的な材料費や加工費の削減だけでなく、不良対応にかかる管理工数、再計画、納期調整といった間接コストの削減にもつながります。結果として、工程内検査は「コストを増やす活動」ではなく、総コストを下げるための手段となります。
問題の早期発見と原因特定が容易になる
工程内検査を行うことで、不良が発生したタイミングや工程を特定しやすくなります。設備条件のズレ、治具の摩耗、作業手順のばらつきなど、原因を絞り込みやすくなるため、再発防止につながる改善活動が行いやすくなるのです。
最終検査で不良が見つかった場合、「どこで問題が起きたのか」を特定するために、過去の工程をさかのぼる必要があります。工程内検査があれば、異常の兆候を早い段階で捉えられるため、調査や対策にかかる時間を大幅に短縮できます。
現場の品質意識が向上する
工程内検査を取り入れることで、作業者一人ひとりが「自分の工程で品質を作り込む」という意識を持つようになります。検査結果がすぐにフィードバックされる環境では、作業の工夫や注意点が自然と身につき、品質意識の底上げにつながります。
また、不良を次工程に渡さないという共通認識が生まれることで、工程間の責任の所在が明確になり、現場全体の連携も強化されます。
クレーム・再発トラブルの防止
工程内検査によって品質が安定すると、顧客への不良流出が減り、クレームや返品のリスクも低下します。クレーム対応には、調査・報告・対策立案など多くの時間と労力が必要です。工程内検査は、こうした表に見えにくい負担を未然に防ぐ効果があります。
結果として、顧客からの信頼向上や、品質監査への対応力強化にもつながります。
工程内検査は「現場を楽にする仕組み」
工程内検査というと、「検査が増えて現場が大変になる」というイメージを持たれがちです。しかし、適切に設計・運用された工程内検査は、不良対応やトラブル対応に追われる時間を減らし、結果的に現場を楽にする仕組みになります。
次の章では、こうしたメリットの裏側にあるデメリットや課題を整理し、工程内検査がうまくいかない原因について解説していきます。
4. 工程内検査のデメリットとよくある課題

工程内検査には多くのメリットがありますが、導入すれば自動的に品質が良くなるわけではありません。実際の製造現場では、「工程内検査をやっているのに不良が減らない」「現場の負担が増えただけ」という声が聞かれることもあります。ここでは、工程内検査のデメリットと、現場でよく起こる課題について整理します。
検査工数が増え、生産性が下がると感じやすい
工程内検査の最も分かりやすいデメリットは、検査にかかる工数が増えることです。作業の途中で検査を挟むことで、作業時間が延びたり、ラインの流れが止まったりするケースもあります。その結果、「生産性が落ちた」「現場が忙しくなった」という印象を持たれやすくなります。
特に、検査ポイントを必要以上に増やしてしまうと、本来は不要な検査に時間を取られ、現場の負担が過剰になります。工程内検査は「多ければ良い」ものではなく、狙いを絞らないと逆効果になる点が課題です。
検査基準が曖昧になりやすい
工程内検査が形骸化する大きな原因の一つが、検査基準の曖昧さです。「だいたい問題なければOK」「これくらいなら許容」といった判断が現場に広がると、検査結果にばらつきが生じます。
特に、目視検査や感覚的な判断に頼る検査では、作業者ごとの差が出やすくなります。その結果、「人によって合否が違う」「同じ不良が見逃される」といった問題が発生し、工程内検査への信頼性が低下してしまいます。
属人化しやすく、引き継ぎが難しい
工程内検査が特定のベテラン作業者に依存している場合、その人が不在になると検査の質が一気に下がることがあります。これは、検査ポイントや判断基準が暗黙知のまま共有されていないことが原因です。
属人化した工程内検査は、教育や引き継ぎが難しく、新人や応援作業者が対応できません。その結果、「結局あの人がいないと回らない」という状態に陥り、現場の柔軟性が失われてしまいます。
検査が「作業の目的」になってしまう
本来、工程内検査は不良を防ぐための手段ですが、運用を誤ると「検査をやること自体」が目的化してしまうことがあります。チェックシートに丸を付けるだけ、数値を記録するだけで、その結果が改善に活かされないケースは少なくありません。
この状態では、不良が出ても「記録はしているから問題ない」と考えられ、根本的な対策が後回しになります。工程内検査が品質改善につながらない原因の多くは、この“やりっぱなし”の運用にあります。
現場の反発が起こりやすい
工程内検査は、現場の作業者にとって「仕事が増える」取り組みとして受け取られやすい側面があります。特に、目的や効果が十分に共有されていない場合、「なぜこんな検査をやらされるのか分からない」という不満が生まれます。
このような状態では、検査が形だけのものになり、見逃しや記入漏れが増え、期待した効果が得られません。工程内検査を成功させるには、現場の納得感を得ることが欠かせません。
デメリットは「設計と運用」で克服できる
ここまで見てきたデメリットや課題は、工程内検査そのものが悪いのではなく、設計や運用が適切でないことによって生じるものです。検査ポイントの見直し、基準の明確化、フィードバックの仕組みづくりなどを行えば、これらの問題は十分に改善可能です。
次の章では、こうした課題を踏まえたうえで、工程内検査を効果的に行うための具体的なポイントを解説していきます。
5. 工程内検査を効果的に行うためのポイント

工程内検査は、導入するだけでは十分な効果を発揮しません。重要なのは、「どこで・何を・どのように」検査するかを明確にし、現場で無理なく回る仕組みにすることです。最後に、工程内検査を形骸化させず、品質向上につなげるための実践的なポイントを解説します。
検査ポイントを絞り込む
まず重要なのは、検査ポイントを闇雲に増やさないことです。工程内検査は、「不良が発生しやすい工程」「後戻りが難しい工程」「不良が顧客品質に直結する工程」に重点的に設定するべきです。
すべての工程で細かく検査を行うと、検査工数が増え、現場の負担が大きくなります。その結果、検査がおろそかになり、かえって見逃しが増えることもあります。過去の不良履歴やクレーム情報をもとに、リスクの高い工程から優先的に検査を設計することがポイントです。
検査基準を誰が見ても分かる形にする
工程内検査を安定して運用するには、検査基準の明確化が欠かせません。「良い」「悪い」といった抽象的な表現ではなく、数値、写真、図を使って判断基準を統一します。
たとえば、外観検査であれば「傷なし」ではなく、「○mm以上の傷はNG」と具体的に定義します。これにより、作業者ごとの判断のばらつきを抑え、属人化を防ぐことができます。
作業者検査と第三者検査を使い分ける
工程内検査には、作業者自身が行う検査(自己検査)と、別の担当者が行う検査(第三者検査)があります。すべてを第三者検査にすると工数が増えすぎるため、工程の重要度に応じて使い分けることが重要です。
作業者検査はスピード感があり、異常にすぐ気づける点がメリットです。一方、第三者検査は客観性が高く、見逃しを防ぎやすいという特徴があります。それぞれの強みを理解し、工程に合った検査体制を構築しましょう。
検査結果を「記録して終わり」にしない
工程内検査で見落とされがちなのが、検査結果の活用です。チェックシートやデータを残していても、それを振り返らなければ意味がありません。
不良の発生傾向や異常値が見られた場合は、すぐに工程条件や作業手順を確認し、必要に応じて対策を講じます。工程内検査は、改善活動につなげてこそ価値が生まれる仕組みです。
現場を巻き込んだ運用を意識する
工程内検査を成功させるには、現場の理解と協力が不可欠です。「なぜこの検査が必要なのか」「どんな効果があるのか」を丁寧に共有することで、検査に対する納得感が高まります。
現場からの意見を取り入れ、検査方法や頻度を見直すことで、「やらされ感」のある検査から、「自分たちのための検査」へと意識を変えることができます。
工程内検査は継続的に見直す
工程内検査は、一度作って終わりではありません。製品仕様の変更、設備更新、人員入れ替えなどに応じて、定期的に見直すことが重要です。現場の実態に合わなくなった検査は、形骸化の原因になります。
工程内検査を「品質を守る仕組み」として定着させるためには、改善を前提とした運用が欠かせません。
