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複合加工機とは?旋削と切削を1台で行う工作機械

2026.07.02
豆知識

1. 複合加工機とは?1台で旋削・切削を行える工作機械

1-1. 複合加工機の基本定義

複合加工機とは、旋削加工と切削加工をはじめ、穴あけ、タップ加工、ミーリング加工など複数の加工工程を1台で行える工作機械です。従来は、NC旋盤で丸物を削ったあと、マシニングセンタに移して穴あけや面加工を行うなど、複数の機械を使い分ける必要がありました。しかし複合加工機を使えば、ワークを何度も取り外すことなく、1台の機械上で複数工程を連続して加工できます。

 

 

1-2. 旋削と切削を1台で行える仕組み

複合加工機の大きな特徴は、「旋削」と「切削」の両方に対応できる点です。旋削加工は、ワークを回転させながら刃物を当てて外径や内径を削る加工方法です。シャフトやフランジ、ボス形状の部品など、丸物部品の加工で多く使われます。一方、切削加工の中でもミーリング加工は、工具を回転させてワークの平面、溝、穴、複雑な形状などを削る方法です。複合加工機は、この2つの加工を組み合わせられるため、丸物部品に穴をあけたり、側面に溝を加工したり、端面にねじ加工を行ったりする作業を1台で完結できます。

 

たとえば、これまで「旋盤加工→取り外し→段取り替え→マシニング加工→検査」といった流れで加工していた部品も、複合加工機であればワンチャッキングで加工できる場合があります。ワンチャッキングとは、ワークを一度固定した状態のまま複数の加工を行うことです。取り外しや再固定の回数が減るため、段取り時間の短縮だけでなく、芯ズレや位置ズレの抑制にもつながります。そのため、工程数が多い部品や、高い位置精度が求められる部品の加工に適しています。

 

 

1-3. 複合加工機が注目される背景

複合加工機が注目される背景には、製造現場を取り巻く環境の変化があります。近年は、多品種少量生産への対応、短納期化、人手不足、熟練作業者の減少といった課題を抱える企業が増えています。複数の機械を使って加工する場合、工程ごとに作業者が段取りを行い、ワークを搬送し、加工条件を管理しなければなりません。こうした作業は時間がかかるだけでなく、人的ミスや品質のばらつきが発生する要因にもなります。

 

複合加工機を導入することで、複数工程を1台に集約し、加工の流れをシンプルにできます。もちろん、すべての加工に適しているわけではありませんが、旋削とミーリングが混在する部品、段取り替えが多い部品、工程間の移動に時間がかかっている部品では、大きな効果を期待できます。複合加工機は、単に「多機能な工作機械」というだけでなく、製造現場の工程改善や省人化、高精度加工を実現するための重要な選択肢といえるでしょう。

 


 

2. 複合加工機でできる加工と代表的なワーク

2-1. 複合加工機でできる主な加工

複合加工機では、旋削加工を中心に、フライス加工、穴あけ加工、タップ加工、溝加工、面加工など、さまざまな加工を1台で行えます。旋削加工は、ワークを回転させながら工具を当て、外径や内径、端面などを削る加工です。これに対してフライス加工は、回転する工具によって平面や溝、ポケット形状などを削る加工で、マシニングセンタで行われることが多い加工方法です。

 

複合加工機は、この旋削とフライス加工を組み合わせられるため、丸物部品の外径を削ったあと、同じ機械上で側面に穴をあけたり、端面にねじを切ったり、平面を加工したりできます。機種によっては、Y軸加工、B軸加工、サブスピンドル、ATCなどを備えており、より複雑な形状にも対応できます。従来であれば複数の工作機械を使っていた工程を、1台にまとめられる点が大きな特徴です。

 

 

2-2. 複合加工機が得意なワーク

複合加工機が得意とするのは、旋削加工と切削加工の両方が必要なワークです。たとえば、シャフト、フランジ、ボス、継手、バルブ部品、油圧部品、医療機器部品、自動車部品、航空機部品などが代表例です。これらの部品は、丸物形状をベースにしながら、穴あけ、ねじ加工、溝加工、偏心加工、側面加工などが必要になることが多く、複合加工機の強みを発揮しやすい分野です。

 

特に、部品の表裏両面を加工する必要がある場合や、外径・内径・端面・側面に複数の加工がある場合は、複合加工機による工程集約の効果が期待できます。サブスピンドルを備えた機種であれば、ワークを受け渡して裏側の加工まで連続して行えるため、作業者が途中でワークを付け替える手間を減らせます。これにより、段取り時間の短縮だけでなく、加工精度の安定にもつながります。

 

 

2-3. 複合加工機が向いている加工条件

複合加工機は、すべての加工に適しているわけではありません。効果を発揮しやすいのは、工程数が多く、段取り替えや機械間の搬送に時間がかかっている加工です。たとえば、NC旋盤で加工したあとにマシニングセンタへ移し替えて追加工している部品や、複数回のチャッキングによって位置ズレが発生しやすい部品は、複合加工機の導入によって改善できる可能性があります。

 

また、高い同軸度や直角度、穴位置精度が求められる部品にも向いています。ワークを何度も取り外して再固定すると、わずかな芯ズレや基準位置のズレが発生することがあります。複合加工機でワンチャッキング加工を行えば、同じ基準で複数工程を進められるため、精度のばらつきを抑えやすくなります。

 

一方で、単純な形状を大量に加工する場合は、専用機やNC旋盤の方が効率的なケースもあります。そのため、複合加工機を検討する際は、「加工できるか」だけでなく、「工程をどれだけ削減できるか」「段取り時間をどれだけ減らせるか」「品質の安定にどれだけ貢献するか」を確認することが重要です。

 


 

3. 複合加工機とNC旋盤・マシニングセンタ・5軸加工機の違い

3-1. NC旋盤との違い

複合加工機と混同されやすい工作機械の1つがNC旋盤です。NC旋盤は、ワークを回転させながら工具を当て、外径、内径、端面、ねじなどを加工する機械です。シャフトやフランジのような丸物部品の加工に適しており、旋削加工を効率よく行える点が特徴です。

 

一方、複合加工機はNC旋盤の機能をベースにしながら、ミーリング加工や穴あけ加工、タップ加工などにも対応できます。たとえば、丸物部品の外径を削ったあと、同じ機械上で側面に穴をあけたり、端面に溝を加工したりすることが可能です。NC旋盤でも簡単な追加工に対応できる機種はありますが、加工できる範囲や自由度は複合加工機の方が広くなります。旋削だけで完結する部品であればNC旋盤で十分ですが、旋削後に別工程で切削加工が必要になる部品では、複合加工機の方が工程集約の効果を期待できます。

 

 

3-2. マシニングセンタとの違い

マシニングセンタは、回転する工具を使ってワークを削る工作機械です。主に平面加工、穴あけ、溝加工、ポケット加工、輪郭加工などに使われ、角物部品や箱物部品の加工で多く活用されています。工具を自動交換できるATCを備えているため、複数の工具を使った加工を連続して行える点が特徴です。

 

複合加工機との大きな違いは、旋削加工を得意とするかどうかです。マシニングセンタは工具を回転させて加工する機械であり、基本的にはワークを回転させて削る旋削加工には向いていません。これに対して複合加工機は、ワークを回転させる旋削加工と、工具を回転させるミーリング加工の両方に対応できます。そのため、丸物部品に平面や穴、溝などの加工が必要な場合は、マシニングセンタに移し替えずに加工できる可能性があります。

 

 

3-3. 5軸加工機との違い

5軸加工機は、X・Y・Zの直線3軸に加えて、回転軸や傾斜軸を組み合わせて加工する工作機械です。工具やワークの角度を変えながら加工できるため、複雑な曲面形状や斜め穴、立体的な形状の加工に適しています。航空機部品、金型、医療機器部品など、高精度で複雑な形状が求められる分野で使われることが多い機械です。

 

複合加工機もB軸やY軸を備えた機種であれば複雑形状に対応できますが、目的は「旋削と切削を1台に集約すること」にあります。つまり、5軸加工機は複雑な形状を多方向から加工することに強みがあり、複合加工機は旋削を含む複数工程を1台で完結させることに強みがあります。両者は似ている部分もありますが、選定時には「複雑形状の加工が主目的なのか」「旋削工程を含めた工程集約が主目的なのか」を分けて考える必要があります。

 

 

3-4. どの工作機械を選ぶべきか

工作機械を選ぶ際は、加工するワークの形状と工程内容を基準に考えることが重要です。丸物部品の外径や内径を効率よく加工したい場合は、NC旋盤が適しています。角物部品や平面加工、穴あけ加工が中心であれば、マシニングセンタが選択肢になります。複雑な曲面や多方向からの加工が必要な場合は、5軸加工機が有効です。

 

一方で、丸物部品をベースにしながら、側面加工、穴あけ、ねじ加工、溝加工など複数の工程が必要な場合は、複合加工機が適しています。特に、旋盤加工後にマシニングセンタへ移し替えている部品や、段取り替えによる精度のばらつきに課題がある場合は、複合加工機によって工程を短縮できる可能性があります。単に機械の機能だけで比較するのではなく、自社の加工工程をどれだけ集約できるかを基準に判断することが大切です。

 


 

4. 複合加工機を導入するメリット

4-1. 工程集約によりリードタイムを短縮できる

複合加工機を導入する大きなメリットは、複数の加工工程を1台に集約できることです。従来は、NC旋盤で外径や内径を加工したあと、マシニングセンタへ移し替えて穴あけやミーリング加工を行うなど、工程ごとに機械を使い分ける必要がありました。そのたびにワークの取り外し、搬送、再段取り、加工条件の確認が発生します。複合加工機であれば、旋削から切削、穴あけ、タップ加工までを同じ機械上で連続して行えるため、工程間の待ち時間や移動時間を削減できます。結果として、加工全体のリードタイム短縮につながります。

 

 

4-2. 段取り替えを減らして加工精度を安定させやすい

複合加工機は、ワークを一度固定した状態で複数の加工を行えるため、段取り替えの回数を減らせます。ワークを別の機械へ移し替える場合、再固定の際にわずかな位置ズレや芯ズレが発生することがあります。特に、同軸度や直角度、穴位置精度が求められる部品では、このズレが品質に影響することもあります。複合加工機でワンチャッキング加工を行えば、同じ基準を保ったまま加工を進められるため、精度のばらつきを抑えやすくなります。検査や修正作業の負担を減らせる点も、現場にとって大きなメリットです。

 

 

4-3. 作業者の負担や人件費を削減しやすい

複数の工作機械を使う場合、工程ごとに作業者がワークを付け替えたり、機械間を移動させたりする必要があります。加工工程が多いほど、作業者の負担は大きくなり、段取りミスや確認漏れのリスクも高まります。複合加工機を活用すれば、こうした手作業を減らし、少人数でも複数工程を管理しやすくなります。人手不足が課題になっている製造現場では、省人化につながる点も重要です。熟練作業者に依存していた段取り作業を減らせるため、現場全体の生産性向上にも貢献します。

 

 

4-4. 省スペース化につながる

複合加工機は、複数の工作機械で行っていた加工を1台にまとめられるため、工場内の省スペース化にもつながります。NC旋盤、マシニングセンタ、穴あけ専用機などを個別に設置している場合、それぞれの設置スペースだけでなく、ワークの搬送動線や作業スペースも必要です。複合加工機によって設備台数を削減できれば、限られた工場スペースを有効に活用できます。新しい設備を増やしたいが設置場所に余裕がない場合や、工場レイアウトを見直したい場合にも有効な選択肢になります。

 

 

4-5. 自動化・無人運転と相性が良い

複合加工機は、ロボット、バーフィーダー、パレットチェンジャーなどの周辺装置と組み合わせることで、自動化や無人運転にも対応しやすくなります。複数工程を1台に集約できるため、ワークの投入から加工完了までの流れを自動化しやすい点が特徴です。夜間運転や休日運転を行えれば、稼働時間を延ばし、生産量の増加にもつながります。特に、多品種少量生産や短納期対応が求められる現場では、複合加工機による工程集約と自動化の組み合わせが、競争力を高める手段になります。

 


 

5. 複合加工機のデメリットと導入前の確認ポイント

5-1. 初期導入コストが高い

複合加工機は、NC旋盤やマシニングセンタと比べて多機能な分、初期導入コストが高くなりやすい工作機械です。本体価格だけでなく、工具、治具、CAMソフト、周辺装置、教育費、保守費用なども含めて検討する必要があります。特に、ロボットやバーフィーダーなどを組み合わせて自動化する場合は、設備全体の投資額が大きくなります。そのため、導入前には「どの工程を集約できるか」「段取り時間をどれだけ削減できるか」「投資回収にどれくらいの期間がかかるか」を具体的に試算することが重要です。

 

 

5-2. プログラム作成や操作に専門知識が必要

複合加工機では、旋削加工とミーリング加工を同じ機械上で行うため、加工プログラムの作成や操作には幅広い知識が求められます。工具の選定、加工順序、干渉チェック、切削条件、ワークの受け渡しなど、考慮すべき点が多くなります。単純な旋盤加工やマシニング加工に比べると、立ち上げ時の難易度は高くなる傾向があります。導入効果を十分に引き出すには、オペレーター教育やCAMの活用、メーカーによるサポート体制の確認が欠かせません。

 

 

5-3. 1台に工程を集約するため、停止時の影響が大きい

複合加工機は複数工程を1台にまとめられる反面、その1台が停止した場合の影響が大きくなります。従来であれば、旋盤工程やマシニング工程を別々の機械で行っているため、一部の設備が止まっても別工程を進められる場合があります。しかし、複合加工機に工程を集約していると、トラブルやメンテナンス時に複数工程が同時に止まる可能性があります。そのため、保守体制、予備部品の確保、メーカーの対応スピード、代替加工の方法などを事前に確認しておくことが大切です。

 

 

5-4. すべての加工に向いているわけではない

複合加工機は多機能ですが、すべての加工に最適というわけではありません。たとえば、単純な形状を大量に加工する場合は、専用機やNC旋盤の方がサイクルタイムを短くできることがあります。また、ワークサイズが大きすぎる場合や、加工内容が単純で工程集約の効果が小さい場合は、複合加工機を導入しても十分なメリットを得られない可能性があります。重要なのは、機械の機能だけで判断するのではなく、自社の加工品に対して本当に効果が出るかを見極めることです。

 

 

5-5. 導入前に確認すべきチェックリスト

複合加工機を導入する前には、現在の加工工程を整理することが欠かせません。具体的には、対象ワークの形状、現在の工程数、段取り替えの回数、加工時間、検査や修正の発生状況、必要な加工精度、月間の生産数量などを確認します。さらに、設置スペース、作業者のスキル、使用する工具や治具、将来的な自動化の必要性も検討しておくとよいでしょう。複合加工機は、導入すれば必ず効果が出る設備ではありません。しかし、旋削と切削が混在し、段取り替えや工程間搬送に課題がある現場では、生産性や品質を大きく改善できる可能性があります。